素材について
製品認証の今後
含有率表示等に関する適正な表示ルールのあり方についての提言等
我々ショップオーナーは、メーカーから生産されたオーガニックコットンの製品を入荷して商品としてお客様へ販売している訳ですが、時折「それって本当?」と思う商品にオーガニックコットンを表示し販売をしているお店を見かけた事が過去にあります。これは原料(原綿)に対する定義は存在しても、製品に対する定義がない為に「全体の何%の含有率?」あるいは「製造段階でケミカルな加工をしていない?」など曖昧な部分が多いことから出てきた事例で、今のままでは今後も同じ事が起こりうる可能性を秘めているのです。そしてようやく消費者保護の観点から、経済産業省が市場の急成長に対応して製品の規準作りに乗り出しました。
(1) 綿花の生産認証の時代から製品管理の時代へ
平成21年3月、独立行政法人 中小企業基盤整備機構より繊維産業に係る平成20年度情報関係事業における「オーガニック・コットン含有率に関する適正な表示ルールのあり方に関する調査事業」という報告書がまとめられました。これは、従来の”農業段階において、国際的な基準に基づき有機性が認証されたコットンと定義する” 「オーガニックコットン」そのものに対する定義ではなく、もう一歩踏み込んだ「オーガニックコットン製品」への適正なガイドラインを定義するものとして 「市場」が求める正しいオーガニック・コットンのあり方を推進するため、有識者による委員会を設置し、本委員会において、オーガニック・コットンの定義や具体的な表示ルールを検討し、最終的に「含有率表示等に関する適正な表示ルールのあり方についての提言等」をとりまとめる。 とされています。 オーガニックコットンの世界的な市場では、金額ベースとして2005年以降は単年度、前年比平均約2倍の伸びで拡大しており、今後もその傾向は続くと見込まれています。報告書では、「市場拡大の背景をもとに、現状ではオーガニックコットンに対する表示の考え方が一定しておらず、市場の生産、流通、消費に対して、不適切な表示による支障が生まれる可能性が想定される」とされており、”国際的に通用する表示ガイドライン作り”と”消費者保護に資する”ことを趣旨として明示することで検討会では同意されています。
(2) ガイドラインに於けるオーガニックコットンの定義
報告書では、オーガニックコットンとオーガニックコットン製品についての定義をされています。 「オーガニックコットン」とは、、農業段階において既に確立されている国際的な基準に基づき、有機性が認証されたコットンと定義する。基本的には、以下の用件に合致するものを想定する。・オーガニック・コットンとは、3年間農薬や化学肥料を使わないで栽培された農地で、農薬や化学肥料を使わないで生産されたコットン・栽培に使われる農薬・肥料については、オーガニック・コットン認証関連団体により、厳格な基準が設けられており、これに基づき、認証機関が実地検査を行ったコットン・遺伝子組み換えを行ったものは、オーガニックコットンとはしない 「オーガニック・コットン製品」の定義(案)は、上記のオーガニック・コットンが原料の一部または全てに使用されていて、かつ使用されていることが証明できる状態であること(表示内容と製品に相違がないこと)を求める。つまり、国際的な基準とされている「Global Organic Textile Standard(GOTS)」や「Organic Exchange Standards(OE)」の事項と同調するよう配慮する必要がある。ただし、オーガニックコットン製品の定義付けについては国際的な基準が未だ一本化されていないことから、「含有率の条件」、「普通綿の混入」、「使用することができる副資材等・化学薬品等」について定義すべきとの意見があり検討されています。国際的な基準ではオーガニックコットンの含有率について規定が異なっており、Organic Exchange Standards(OE)の場合、オーガニック・コットンの含有率が 5~100%と規定されているのに対し、、「Global Organic Textile Standard(GOTS)」の場合は、オーガニック・コットンの含有率が70%以上を求められています。また、「Global Organic Textile Standard(GOTS)」は普通綿の混入を禁止しているのに対し、「Organic Exchange Standards(OE)」では普通綿の混入は可能とされています。
(3) オーガニックコットンに関する基準と規格
2009年現在のオーガニック認証基準・規格として、農業段階ではアメリカ農務省が規定している自然有機プログラム「USDA/NOP」やEU統一基準EEC規定が国際ルールとしてあり、中でもEEC規定(2092/91号)については日本の有機JAS制度との整合性が担保されており、輸出入時の審査が簡略化されます。製造段階では、国際ルールとしてGlobal Organic Textile Standard(EKO)とOrganic ExchangeStandards(OE)、二つの審査・認証機関があり、ISO65を取得し、より高度化された基準内容の Global Organic Textile Standard(EKO)に流れは傾きつつあるように見受けられます。ちなみに日本国内では、日本オーガニックコットン協会のJOCA基準(JOCA)と日本オーガニックコットン流通機構のNOC基準(NOC)と大きく二つの基準が存在しています。ただし、日本オーガニックコットン協会のJOCA基準(JOCA)については、オーガニック繊維製品世界基準(GOTS)本部の意向・方針を考慮して、2010年末をもって、JOCAの書類ベースの認証・タッグ発給の方式を中止し、GOTS方式を全面的に導入するとされています。
LINの取扱い商品でGOTS認証を受けている企業とブランド名
・(株)新藤 - 天衣無縫タオル、天衣無縫インナー
・C.A. BIO - Peau-ethique
(4) 表示及び転記
報告書には製品の表示について次のように書かれています。「オーガニック・コットン製品における表示は、オーガニック・コットン原料の使用状況が、消費者に対して明確となるような表示とする。また、明確な基準・規格に基づく表示を推奨する。」難しい表現で書かれていますが、肌の弱い方や敏感な肌の持ち主は普段、品質表示タグの存在にどれほど悩まされているか…。残念ながら、この文面を見る限り、あまり理解されていないかもしれません。要するに記載内容によって他の製品との決定的な差別化を図ろうとする意図が感じられます。本当は品質表示タグは製品に縫い付けて無い方が有り難いのですがね。
(5) 表示禁止事項
ここでは、「科学的根拠が示せない用語など、消費者に誤解を与えるような表示は禁止とする。」とあります。続けて「科学的根拠の示せない、消費者にとって紛らわしい用語が販売段階で使用されているケースがあることから、消費者保護の観点から、このような言葉を掲示させないことが求められる。」より具体的な例として、・オーガニック・コットンでアトピーが治る。・オーガニック・コットンは健康に良い。・オーガニック・コットンは安全である。・オーガニック・コットンは肌に優しい。ただし、科学的根拠がある用語については表示可能とする。一例を以下に挙げる。・製造工程において化学物質を使用していないことから、環境に配慮された製品である。 この点については少し意外に思いましたが、使用者としての経験値では無く、実際に化学的根拠が無ければ紛らわしい表現とされるようです。さらに事業者ヒアリング調査結果では、「これら健康などへのメリットについては、将来的に科学的な根拠を提示する必要がある。」との結果も出ています。
(6) まとめ
本調査事業の背景の中では、「オーガニック・コットンの信頼性を確保しつつ、消費者保護の観点を踏まえ表示の適正化を図ることが市場が拡大しつつある現段階において喫緊の課題となっている。」とされていますが業界の信頼向上が望めるなら大いに期待をしています。そして、間接的な費用負担など消費者は望んでおらず、消費者保護を大義名分にした認証団体や任意団体の創設によって利権や天下りの温床にならないよう切に願っています。
関連項目 : 私達の地球環境について